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Agriculture, Forestry & Fisheries / 農林水産 Geographic Information Science / 地理情報科学

Austrian webinar for drone utilization

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オーストリア連邦農業地域観光省が主催する農村地域活性化プログラムのオンラインセミナーに参加しました。
 
このプログラムは、農業や林業、バリューチェーン、環境保護、エネルギー生産、農村観光に関係する多くの参加者の協力とネットワークを促進することを目的に農村地域の課題に対する意識を高めることを目指しています。
 
第2回目のセミナー内容は農山村でのドローン活用の可能性についてです。資源量調査から管理体制整備までドローンはあらゆる場面で効果的に利用できることが研究面でも実務面でも分かってきています。

Webinar Drohnenflug im und über den Wald

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森林(現場)から商品(消費者)までを繋ぐ品評会 / Competitive exhibition linking forests to products

先日、主に地理情報システムを扱うIT業界の方から、ご自身の能力を活かして地方で整備の進んでいない森林を良くしたいというお話とそのビジネススキームについてご相談を受けました。

相談者は、昨今の木材製品に限らず森林の価値が向上していないことに問題意識を持っておられ、さらにデザイン性にもこだわった木材を原料とした商品開発にも関心を持っておられました。

「どのように森林の価値を向上させ、より多くの人にその価値を知ってもらうのか」という方法論に対して、相談者は「森林の情報化」と「都会と地方の繋がり強化」をどうにか進められないかというお話でした。

森林経営に役に立つ森林の情報化だけではなく、商品を購入する側=一般市民から見ても森林の情報化がメリットとなるような仕組みが必要だと感じます。関わる主体それぞれにメリットがありつつ、その取り組みを進めれば進めるだけ森林整備が進むような仕組みはないのだろうか。例えば、ひとつの例として製品をアピールする場を設ける、従来の品評会のような製品だけを評価するのではなく、情報化された森林やその森林を管理する人物なども一緒に見ることができるような場があれば面白そう。例えばこんな感じです。

関わる主体は林業事業体、一般市民、実行委員会(仮)、品評会場の4つです。

林業事業体は保有山林が中小規模(3~10ha程度)の林産企業や林家を想定、一般市民は年齢住所問わず森林や木材製品に関心のある人を想定、実行委員会は本スキームを中心となって進める組織、林業事業体と一般市民を品評会というイベントで繋ぐ役割をもつ。

  1. [実➡林]森林の情報化と森林情報の蓄積促進
  2. [林➡実]情報化に対する支払い
  3. [市➡実]会員費支払い
  4. [実➡市]森林情報の公開と会員特典提供
  5. [林➡会]製品の出品、森林から商品までのプレゼン、[市➡会]協力者として参加、[実➡会]開催準備
  6. [林、市➡会]一般参加
  7. [会➡市]気に入った商品の購入、[会➡林]参加費一部を参加林業事業体に配当
  8. [会➡実]開催収益

一般的な話ですが、農林水産業以外からメーカーや技術者の方が関わる場合、その技術や製品を使用することが事業の中心となってしまって、その分野で課題となっている本当の根っこが解決されないことが見られます。

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GISで何ができるのか? / What can we do with GIS?

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前回、GIS(地理情報システム)とは何かについて簡単に書きました。

https://fuchsbaum.site/what-is-a-geographic-information-system/

 

では、そのGISを使って何ができるのかについて例を挙げて話します。

まず、GISはモノやコトに関する地理的位置および範囲に関する情報と属性に関する情報が互いに参照することのできるシステムであるということでした。つまり、気象、環境、経済、社会等あらゆる事象について、住所、距離、面積、体積、方向等の情報と気温、植生、水質、地価、人口等の情報が空間的にどのような関係があるのか、異なる空間とどのような関係にあるのか、のような事象の性質や状態を知ることができるシステムということです。

例えば、こんな時にGISを使うと便利です。「(キャンプをしたいけど複数候補地がある場合)ある場所はどういうところか?」、「(引っ越し先の候補として)ある条件を満たす場所はどこか?」、「(日中と夜の気温差について)変化の程度はどのくらいか?」など。

言葉ではよく分からないと思うので、いくつか事例を挙げます。

Case1 地方自治体におけるエリア別の人口密度

地方自治体で行政域でなにかしらの政策を計画または実施する際には、その時々求められる範囲で人口動態を知る必要があるかと思います。GISでは、適切な条件により生成されたデータがあれば、その適用範囲も自由に設定でき、それをカテゴリーや数値幅に合わせて色分けし、マップとして表現できます。そうした目に見える表現により、情報の共有化が簡単にできます。百聞は一見にしかずのようなものです。(厳密に言うとこの絵だけでは変化を表せてませんけどご了承ください)

例えば、人口分布について滋賀県全体で見るとこんな感じです。左が、10年前の各町丁の範囲で15歳未満の人口割合を示しています。右は、同様に10年前の各町丁における65歳以上世帯員のいる世帯の割合を示しています。これを見ると、大雑把に言って、鉄道路線沿いの町丁には若年層が多く、その反対として鉄道路線沿いから遠い町丁には高齢層が多いように見えます。このデータから実際に比例関係を計算してみると、高い確率で住民年齢と鉄道路線までの距離との間で比例関係がある可能性が示唆できます。こんな感じで、マップで表現してみてから直感的に情報間の関係性に気付くこともよくあることです。

Case 2 山腹斜面の地形評価(傾斜の程度)

GISでは、地理空間の表現方法として地形解析ができることもメリットのひとつです。例えば、山のどこがどれだけ急な斜面になっているのか、などの地形的な情報は衛星画像、航空写真、ドローン等による空撮ではなかなか精確には分からないものです。林業のような山林で仕事をする産業では、現場の状況を詳しく知ることは経営上必要なことです。特に急傾斜の場所では作業方法もそれに適した工程が必要であり、安全面から見ても重要です。GISを利用することで、作業をする現場の状況を網羅的に把握できます。

Case 3 山林での集水域の算出

もうひとつ、せっかくなんで林業に絡めて、山林での作業は水の流れを知ることも大切なことです。GISの地形解析では、傾斜の算出ができることに加え、その方向も分かります。傾斜方向を知ることにより、水の流れが(ある程度)把握できます。水の流れが分かるということは、その場所の上流域と下流域が分かり、水が流れる範囲と量が分かります。それを計算したものが集水域の算出図です。

 

GISで何ができるのか、たくさんできることがあるので、到底一度に書ききれませんが、大体イメージできたのではないでしょうか。

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地理情報システムとは何か? / What is a Geographic Information System?

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GISとは

GIS(Geographical Information System)とは、地理情報システムのことで、コンピュータに取り込んだ地図データや属性データを効率的に蓄積・検索・変換して、地図出力や空間解析、さらには意志決定の支援ができるように設計されたツールである。

GISにはもうひとつ意味がある。地理情報科学(Geographic Information Science)という学問のことである。地理情報科学は、1990年代に生まれた学問で、純粋理論から応用まで、その対象は自然現象から社会現象までと幅広いレベルと分野で貢献している。

GISの適用分野は、地図の作製、自然資源の定性的・定量的な把握と管理、事業計画や環境計画、供給処理施設の管理などの計画・管理業務、マーケティングなど多岐にわたるが、いずれも広範囲な空間を制御したり、管理したりする手段として利用されていることが多い。GISは、自然地理学、人文地理学、地質・鉱物学、都市工学、農学、林学、環境科学、生態学、地域経済学、考古学など多くの分野で注目を集めている。

GISのイメージ(滋賀県の各情報をレイヤーとして表現した場合)

 

GISの特徴と表現の基礎

事象を理解しようとするとき、まずその事象に関係ある物体を把握する必要がある。GISで物体(空間)を把握する場合の特徴として3つある。

1つ目は、的確な範囲で物体(空間)をとらえることができること。

すなわち、顕微鏡が小さくて見えない世界を見やすく展開するのに対して、GISは大きすぎて全体の把握が困難な対象をわかりやすく展開する手段であると考えられる。また、逆に全体(システム)の中で、大きくとらえた後、着目した要素の詳細な特性を瞬時に表示できる。紙ベースの手法では、このように任意の単位で空間データをとらえることは大変な作業であったが、GISでは簡単に行うことができる。

2つ目は、多くの情報が重なりあう実世界を、全体を意識しつつ必要な情報だけを抽出することができること。

言い換えると、多くの地理的な情報(データ)の重なりあう実空間を、必要な情報(データ)ごとに(情報群または情報図)レイヤーを作成し、必要に応じて重ね合わせ空間をとらえることできる。つまり、普段から見てるなんとかマップや航空写真などで同時に見ている、山や川などの自然分類、土地利用、植生、水路、標高等の情報を各レイヤーに分解し、目的に応じてそれらのレイヤーを重ね合わせる。実空間をレイヤー構造化して理解することができる。

3つ目に、GISの扱うデータ形式としてラスターデータ形式とベクターデータ形式の2種類のデータ表現を用いること。

ラスターデータ形式は、空間をメッシュにより表示する形式である。標高データのように、値が絶対尺度になっている数値データと土地利用データのように名義尺度となっているデータ(カテゴリーデータ)に大別できる。ラスターデータでは、一般にメッシュの大きさが空間対象物に比べて十分小さいことが求められる。その反面、メッシュのサイズを小さくするとデータ量が増大し、記憶容量の増大・処理時間の増大などの欠点がある。

ベクター型のデータは、図形情報と各図形要素の属性を保持する属性テーブルとで構成されている。ベクター型の図形情報は、点、線、面の三つのパターンで表現される。例えば水田は面(ポリゴン)、水路は線(ライン)、水利施設は点(ポイント)として形状を表す。属性テーブルは、各図形要素の情報を表形式で保管している。例えば、水田の圃場面積、減水深、収穫量等の属性情報を区画の図形情報とリンクさせ、情報を管理している。

GISで扱うデータ形式(左:ラスターデータ、右:ベクターデータ)

GISの特徴として、ラスターデータとベクターデータの形式表現があることを言いましたが、それぞれのデータで属性情報を付加することができます。通常、ラスターデータは、空間全体を均一なグリッドに分割していますが、そのグリッドにその地点の属性情報を与えることで地理空間を表現します。ベクターデータは、空間的な位置や形状を点(ポイント)、線分(ライン)、領域(ポリゴン)の組み合わせによって表し、それらに属性情報を与えることで地理空間を表現します。

地理空間と属性情報の関係(ベクターデータ)

 

GIS利用の手順

GIS利用の手順は、大きく「データ収集」、「データ形式変換」、「投影法設定」、「表示/解析」に整理することができる。一般的に、GIS利用の作業の中で前処理に対する労力の比重が大きいが、年々進むデータの基準化と整備のおかげで、以前より軽減されている。また、前処理が行われて、GISデータが作成された後の解析も、既存のプログラムと組み合わせることにより、精度が向上し、事業の調査、評価、計画さらに施設の管理にも効率的に利用できる。

 

補足(パトリックゲデスと地理情報科学からの視点)

誰もがいつも見ている目線やルーティンワークの視点を少し変えただけで物事の理解が深まったり、意図せず課題の解決につながったりした経験があるかと思います。GISの有効性は、こうした様々な視点から物事を考えることができる、空間情報の視覚化やそこから明確に情報共有が可能となる点が挙げられます。

19世紀後半にスコットランド出身のパトリック・ゲデスという近代都市計画の学者がいました。社会学や建築学分野ではよくご存知の方がいらっしゃるかと思います。20世紀初頭、都市計画に地域という概念を取り入れ、地域調査(Regional Survey)運動を展開した人物です。彼は、社会学、地理学、政治学など様々な学問が重なり合うCivicsという言葉で、統計や数値を重視した社会学ではなく、社会的改良を志向し、都市に関する地理、歴史、政治、教育といった様々な要素を組み込んだ応用社会学としての市政学の重要性を主張しました。

パトリック・ゲデスの「知識(情報)の総合的統合」
Source: Institute for Palestine Studies

パトリック・ゲデスは、GISの基礎となるような考え方(Regional Survey、Outlook Tower、know your region and you can understand the worldなど)を提唱し、どれも現代においてもあらゆる課題に適用できる考え方だと思います。フィールドワークの重要性にも通じるところがありますね。

Diagram of Patrick Geddes’s interdisciplinary Outlook Tower(学際的なアウトルック(展望)タワー)

現在、世界的な地球環境保全の取り組みである国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)、京都議定書締約国会合(CMP)、パリ協定締約国会合(CMA)などが開催されています。それらに繋がる最初の国連会議が1992年にリオデジャネイロで開催されました。それ以来、「持続可能性/サステナビリティ」の課題に対する統合的対応の創出における市民参加への「ローカルアジェンダ21」アプローチが国際的に広がっています。持続可能な開発を意図する一般的な呼びかけである「Think Global、Act Local」は、このパトリック・ゲデスの著書「Cities in Evolution」に起因していることは忘れてはいけないことです。