カテゴリー
Agriculture, Forestry & Fisheries / 農林水産 Environmental system / 環境政策 Social activities / 市民活動 Working style / 働き方

森づくりとまちづくりのグランドデザイン / Grand design for Forest Creation and Cultivating regional

Written in Japanese

現在の日本の森林計画は、森林の多面的機能を発揮することで森林機能論を前提とした規制の考え方があるが、次世代の森林がどのような姿であるのかについての将来ビジョンと方法論がよく分からない。多くの有識者が、多様な機能を重ねて持つ森林に「機能論」はなじまないと指摘するように、まだ科学的に根拠を伴わない機能も少なくなく、森林の遷移とともに数値的評価の変化を考慮して森林計画を設計することは無理がある。今、重要で必要な課題は、1950年代以降、人工林による資源造成に邁進してきた日本にあって、次世代の森林への更新をいかなる理念と計画の下で進めるかを考えることで、それも、樹種構成や林型のあり方だけではなくて、人の営み(生産や生活のあり様)との関係を組み込んだ議論が必要である。林業の課題はもう林業だけの問題ではなくて、森林を含んだまちづくりとグランドデザインが求められている。

森林管理と経営の担い手として、一様には定められなくなってくることが考えられる。日本の森林の所有形態は多様であり、既存の統計には的確に反映されていない。国有林野、都道府県有林、市町村有林、企業法人所有林、生産森林組合、財産区、入会林野、その他の個人所有林などがあり、個人所有についても共有名義や代表名義もある。従来の林政は、これらの諸形態をそのまま経営体として政策対象にしてきたが、進人口減少と地方分散型居住スタイル、階層的共有財の管理・利用、働くスタイルの変化など、これからの時代には、そうした所有の諸形態とは一線を画した林業経営のための経営体を必要とされることが考えられる。現代の社会に適応した法人経営体である必要がある。

政策形成のイノベーションは行政からは生まれない。参加型の政策形成については広く取り組まれてきたが、ボランタリーが主軸となる参加活動で、政策形成の不備を補うことは出来ない。そもそも、行政主導という多くの一般市民がもつ認識と持続的な政策に必要な制度的な仕組みを考え直す必要がある。①基礎自治体の基礎にある集落等の地域コミュニティなくして、地域に関わって、どのように立案された政策も通らない。②森林・林業・林産業に関わって、産業政策のあり方にも議論が必要である。今後、林産業のあり方は、垂直的・水平的に大きく変わる可能性が高い。そうした議論を幅広くする上で、従来の林政分野に偏った議論を広く他分野に対しても開放して行く必要がある。

カテゴリー
Agriculture, Forestry & Fisheries / 農林水産 communication / 会話・報道 Lifestyle / 暮らし

コロナウイルスの流行は農林水産業にどのような影響があるのか / how the coronavirus epidemic is affecting on agriculture, forestry and fisheries

Written in Japanese (EyeCatch: Bauernverband fürchtet wegen Corona-Krise Ernteausfälle, Süddeutsche Zeitung)

コロナウイルスの拡大により、世界ではイベント中止や外出自粛など人の活動を制限する状況が広がっています。3月末現在で被害拡大は一向に収まる気配がなく状況はまさに刻一刻と変化し、毎日のニュースに驚くばかりです。

世界に先駆けてスペインでは、あまりの感染拡大に不要不急の2週間「労働禁止」を表明しました。今後世界中で経済活動も制限せざるを得ない状況になることが予想され、特に食物を含む生活必需品の物流が止まらないか、食物を生産する側が生産できなくならないか、心配しています。

欧州の農林水産業分野でも、すでに人の移動を制限している影響が出てきています。

農業についてドイツの事例です。ニュースでも毎日のように報道されていますが、コロナウイルス流行による人の移動制限で、例年に比べ圧倒的に季節性の労働者が不足しています。ノルトライン=ヴェストファーレン州では、春先にはジャガイモ、レタス、キャベツ、ネギなどを植栽しますが、労働者が全く足りず45000人が不足していると発表されています。ドイツ全体でそうですが、春にはアスパラガスの生産が盛んにされますが、ヘッセン州では17000人程度の労働者を必要としています。

これに対して連邦政府は季節労働者に対する規制を緩和しようとしています。例えば、滞在許可を通常は最大70日間のところを115日間に延長し、収穫と播種(種まき)までの工程を支援できるように、季節労働者としての登録可能条件の見直しを始めています。毎年、ルーマニアやポーランドからの季節労働者が多いですが、チェコやスロバキアからの労働者の登録も進められています。

https://www.sueddeutsche.de/wirtschaft/agrar-koeln-erntehelfer-in-nrw-dringend-gesucht-schon-viele-freiwillige-dpa.urn-newsml-dpa-com-20090101-200328-99-504934

https://www.sueddeutsche.de/gesundheit/gesundheit-friedrichsdorf-bauernverband-fuerchtet-wegen-corona-krise-ernteausfaelle-dpa.urn-newsml-dpa-com-20090101-200324-99-446220

漁業についてはこんな報道がされています。

ニーダーザクセン州沿岸地域では、カニ漁師が先の見えない水産業に苦慮している様子が伺えます。コロナウイルスの流行に対して、カニ漁自体は問題なく行うことができるのですが、レストラン等飲食店の閉鎖で需要が減っていること、小売業者の在庫がまだ残っているため、売り上げが上がらないことが報道されています。

https://www.sueddeutsche.de/wirtschaft/fischerei-krabbenfischer-starten-in-ungewisse-saison-dpa.urn-newsml-dpa-com-20090101-200328-99-504956

労働力不足や流通が滞るような状況になっている一方で、コロナウイルス流行によって季節的ガーデンの需要増加が予想されることが挙げられています。日本でいう小規模な市民農園のようなガーデンです。

https://www.sueddeutsche.de/gesundheit/gesundheit-fulda-corona-krise-hoehere-nachfrage-nach-saisongaerten-erwartet-dpa.urn-newsml-dpa-com-20090101-200328-99-504867

カテゴリー
Agriculture, Forestry & Fisheries / 農林水産 Geographic Information Science / 地理情報科学

森林(現場)から商品(消費者)までを繋ぐ品評会 / Competitive exhibition linking forests to products

先日、主に地理情報システムを扱うIT業界の方から、ご自身の能力を活かして地方で整備の進んでいない森林を良くしたいというお話とそのビジネススキームについてご相談を受けました。

相談者は、昨今の木材製品に限らず森林の価値が向上していないことに問題意識を持っておられ、さらにデザイン性にもこだわった木材を原料とした商品開発にも関心を持っておられました。

「どのように森林の価値を向上させ、より多くの人にその価値を知ってもらうのか」という方法論に対して、相談者は「森林の情報化」と「都会と地方の繋がり強化」をどうにか進められないかというお話でした。

森林経営に役に立つ森林の情報化だけではなく、商品を購入する側=一般市民から見ても森林の情報化がメリットとなるような仕組みが必要だと感じます。関わる主体それぞれにメリットがありつつ、その取り組みを進めれば進めるだけ森林整備が進むような仕組みはないのだろうか。例えば、ひとつの例として製品をアピールする場を設ける、従来の品評会のような製品だけを評価するのではなく、情報化された森林やその森林を管理する人物なども一緒に見ることができるような場があれば面白そう。例えばこんな感じです。

関わる主体は林業事業体、一般市民、実行委員会(仮)、品評会場の4つです。

林業事業体は保有山林が中小規模(3~10ha程度)の林産企業や林家を想定、一般市民は年齢住所問わず森林や木材製品に関心のある人を想定、実行委員会は本スキームを中心となって進める組織、林業事業体と一般市民を品評会というイベントで繋ぐ役割をもつ。

  1. [実➡林]森林の情報化と森林情報の蓄積促進
  2. [林➡実]情報化に対する支払い
  3. [市➡実]会員費支払い
  4. [実➡市]森林情報の公開と会員特典提供
  5. [林➡会]製品の出品、森林から商品までのプレゼン、[市➡会]協力者として参加、[実➡会]開催準備
  6. [林、市➡会]一般参加
  7. [会➡市]気に入った商品の購入、[会➡林]参加費一部を参加林業事業体に配当
  8. [会➡実]開催収益

一般的な話ですが、農林水産業以外からメーカーや技術者の方が関わる場合、その技術や製品を使用することが事業の中心となってしまって、その分野で課題となっている本当の根っこが解決されないことが見られます。

カテゴリー
Ecological Economics / エコロジー経済学

経済学のなかの自然とは~エコロジー経済学座② / What is NATURE in economics?

Written in Japanese

1.土地自然はどのように扱われてきたか(自然と人間の関係に関する心理)

狩猟採取社会の土地自然

土地自然は生命を与えてくれるものであり、すべての財の源泉 生産要素
人びとは土地に属し、尊敬し、その恵みを喜んで受け取る
土地にはみんなで分かち合うすべての動植物が含まれる
人びとは土地を通じて祖先と子孫につながる
土地所有という概念がなく、土地は生態系そのもの

狩猟採集社会の生活
群れ(バンド)という社会構造はあるが家族というサブ構造はない
家族と共同体を律する平等の発生
森林からサバンナへ進出 ヒト以外の霊長類はおおむね森林地帯に生息
サバンナでは動物の肉や昆虫なども取入れた雑食 森林内では果実や葉などの植物性の食物を主体にしていた
食物を一旦ベースキャンプなどの安全なところに運んでから食べる(運搬行為)
ヒト以外の霊長類では食物は採集されたその場でただちに消費される。(手から口へ)
人間は食物を家族や共同体のもとに持ちかえり、そこで消費する。他人への分与、他人からの分与という行為の習慣化 各個体は群れとしては行動するが、採食は個体ごとに勝手に行う。

家族の出現 分配に基く消費
狩猟採集社会は肉の分配を核とした食物消費システムを持ち、これはバンドの成員に経済的な平等と相互依存をつくりだしている。
バンド内のだれも特別の権威を持つことはない。意思決定は合議でなされ、誰も他人を強制できない、平等である。リーダーはいない。

平等な分配は過剰な生産を抑制する
平等性を社会原理とする原初的な人間社会では、人間と環境との関係は自制的なもの、過剰を避けるものとなる。
狩猟・採集社会では、多くの場合、植物性食物に依存している。自然に繁茂する植物性食物に依存しているかぎり、その存在量に社会の大きさは規定される。カラハリのブッシュマンは平均50人規模のキャンプを数週間の単位で移動して、植物性食物を手にいれている。おそらく、植物の生育量によって、社会の大きさが制限されているのであろう。また、男と女の間の狩猟と採集という分業以外の社会的分業が発達していないということは、大きな社会になることのメリットが彼らの生活スタイルのなかに存在していないことをも示している。

農耕社会の土地自然

2つの生産要素、土地と労働
Sir William Petty(1623-87)労働は富の能動的源泉であり土地は受動的源泉
フランス重農主義、Adam Smith, John Stuart Mill土地が能動的に富を生む

ユダヤ教では土地は中心概念(人Israel、神Yahwehと土地がユダヤの生産の三要素)
土地は相続財産であり、家族が相続し、土地の管理責任を負った、人々は土地に属していると考えた
天地創造:陸と海が分かれ、陸は植物を、海は魚を、神は鳥と動物を創り、6日目に神は想像から男と女を創り、すべての造物主を見た。→人間は単にひとつの種ではなく、土地と植物と動物を支配する権威を与えられた キリスト教では土地は神のものであり、共通善のために供するべきもの。しかし中世のカソリック教会は領主の利益にくみした。

農耕社会の生活

■人間と自然

  • 生態系への介入、人工的な自然、極相への遷移を妨げる、耕起・除草
  • 自然の過程から人間労働へ(自然の賜物 -> 労働の成果)(自然観の変化)
  • 物質循環の撹乱(施肥)富栄養化、人工的な窒素の固定

■農耕の人間社会への影響

  • 余剰の発生と余剰管理システムの必要
    自然と富の分離、冨という観念の創出
    所有権(冨の支配権)、分配(税、地代、農民の取り分)、余剰の交換、交換を仲立ちする貨幣、市場、商業(商人)
  • 生産者と不生産者の分業
    祭祀(さいし)、政治、管理
    芸術、科学
    都市の出現、文化の中心
  • 不平等の発生と社会の複雑化
    社会秩序の維持、法と倫理、宗教、警察
    農耕社会と遊牧社会の交わり、農耕社会どうしの対立、国家、軍隊

■農耕社会の発展(成長)

  • 土地の集約的利用、労働生産性の減少(同じ作物を得るのに、より多くの手がかかる)
    焼畑の労働生産性は高い、土地の粗放的利用
    現代の農業は土地を集約的に利用するが、労働生産性は高くない
  • より多くの土地を森林などから農地へ転換する
    作物を得る土地を広げることにより、農業生産の拡大をはかる
  • 人間の労働から外部エネルギーの利用へ
  • 農耕社会の成長は永続的ではない。 人口増加を農業は支えきれない。

工業社会の土地自然
工業社会では、土地が富を生みだすのではなく、労働が富を生み出す
土地自然は富の源泉として見えなくなる。
植民地からの生物資源の供給
地下からの化石燃料の供給

2.経済学のなかの自然

  • 経済学における土地自然
    • David Ricardo 土地の価値創造の役割を否定
    • 新古典派経済学 価格は主観的選好により市場で決定→土地の価値創造の役割を否定
    • 土地は空間と代替可能な資本のミックスとして扱われる、生産要素として重要な意味を持たない
重農学派労働が父 土地が母
アダム・スミス労働が父 土地が母
分業によって同じ労働からより多くの財(富)を作り出す
リカード差額地代 限界生産力逓減法則
マルサス等比級数的人口増加 食糧生産は等差級数的増加
マルクス価値理論 労働だけが富を生産
メンガー主観的価値理論

しかし、実際には自然は以下の特徴を持つ。

  • 土地(資源)、労働、資本の生産要素の中で再生産可能でないのは土地(資源)だけ
  • 工業生産は資源の加工にすぎない、地球上の生産は太陽エネルギーが支えている一次生産しかない

これまでの経済学における環境の扱い

  • 経済成長は環境から制約を受けない技術革新仮説
    資源不足 -> 価格上昇 -> 技術革新 -> 代替物の供給
    地球環境は物質と熱のフローのバランスの上に存在しているので、そのバランスを崩す物質とエネルギーのフローにより、地球環境およびその上の生態系は壊れる。環境容量仮説
  • 外部費用(社会的費用)の内部化
    効率的な資源配分の前提としての適正な市場価格
    適正な市場価格を保障する自由競争と合理的に行動する個人・企業
    外部費用(社会的費用)を適正に評価することができれば制度的に内部化可能
カテゴリー
Ecological Economics / エコロジー経済学

経済学の基本仮説とは~エコロジー経済学座① / What is the basic hypothesis of economics?

Written in Japanese

経済学が教えてくれたことは何か?

市場がうまく機能することによって効率的な資源配分が実現すること
個人の利益を追求することが社会の調和をもたらすこと

経済学の3つの基本仮説

  1. 社会は個人から構成される
  2. 均衡仮説
  3. 貨幣評価至上主義

 

1.社会は個人から構成される

社会的厚生は個人の厚生の総和 welfare 福祉
社会を構成している要素を足し合わせると社会になる 要素還元主義
分析的手法により真理に近づく しかし、個人の和は社会ではない

機械:機械を構成している要素に構造が依存する
システム:全体の構造が各要素のオペレーション(作業)を規定する
(全体の状態やパターンは定義できるが、構成要素の詳細な状態は移ろいやすく、定義が困難)
生物はシステムである。生物を構成している要素は常に変化しているが、行動パターン、記憶、個人としての存在感覚は維持されている。
例えば、複雑系について、機械システム(単純なシステム)は部品の総和であるが、複雑系は部品の総和ではない 
人間の体について、器官から構成されるが、器官によって説明できない
生物、社会、生態系(ガイア)、これらはすべてシステム
要素から関係性に究明の対象が移動
要素の場における振る舞いのパターンの解明
その例は、iPS細胞であり、個人としての行動規範、家族の一員、社会の一員としての駆動規範は異なる
「個人の総和が社会になる」という仮説の誤謬(ごびゅう)
個人は個人であり、社会成員であるが社会そのものではない。
同一個人であっても、一人の選好、家族の一員としての選好、地域人としての選好は異なる。
「社会は自発的交換にたずさわる個人の統計的寄せ集めではなく、何かもっと微妙で複雑なものである。集団や共同体は個人の立場からだけでは理解することはできない」
「Private personal preferences と individual-social preferences は別のもの」レスター・C・サロー、『デンジャラス・カレンツ』東洋経済新報社1983年
コモンズの存在(環境は個人の財産に分解されるものではなくコモンズ)
local commons    global commons
共有地の悲劇 Garrett Hardin 1968
入会林 里山
社会、エコシステムは複雑系であり、機械システムではない:同じ入力が同じ出力をもたらすのではない、あるときは個人としてあるときはコミュニティの一員として行動する。
「コモンズの悲劇」回避のためには、従来は政府など行政によるコントロール(補助金又は規制)か、あるいは分割して私有化し永続的な利益を得るためには適切な管理をせざるを得ないという市場原理に任せるしかないというのが定説だった。こうした定説について「地域のコミュニティによる自発的管理」が抜け落ちていることに気づき、多くの現場に学び、世界各地で政府の力に頼ることなく、日本の入会システムを含めてこうした「悲劇」を経験せずに生きながらえてきたコモンズの存在を明らかにする。コモンズの管理へ向けて人々がやる気を出すかどうかは、価格だけではなく、他の資源の入手可能性や資源の分配をめぐるコミュニティの歴史(経過・伝統)に規定されることなどを導き出す。

 

2.均衡仮説

経済の状態は常に均衡点に向かって動いている。均衡を妨げている制度、慣習を取り除けば、秩序がおのずから実現する。これを保証するのが収穫逓減法則、すなわち、負のフィードバックである。

正のフィードバックを想定していない。実際には正のフィードバックが存在している。規模の経済 大企業はそれだけで優位 ⇒ トヨタの車が売れるのはトヨタの車が売れているから。マイクロソフト・ウインドウズが売れるのはそれが売れているから。

均衡点からの乖離 地球温暖化 温暖化が進めば進むほど温暖化が進む 生物多様性の喪失 静学的状態を説明できても動学的状態を説明できない

 

3.貨幣評価至上主義

人々の選好の大きさは効用によって示され、効用はWTPとして顕示される
したがって、WTPに裏打ちされた社会の総支出は社会の福祉水準を代表することができる。

  • GDPは企業から家計に支払われるマネー・フロー(分配側面)あるいは家計から企業に支払われるマネー・フロー(消費側面)であるが、それは福祉水準を代表していない。
  • DE 福祉の悪化を補償する消費(defensive expenditure:防御的支出)の増加はGDPを引き上げる
  • DNC資源浪費的な消費は自然資本の破壊を通じて福祉水準を引き下げる(depreciation of natural capital:自然資本の償却)
  • 福祉水準はGDPからDEとDNCを除いたもの
    Genuine Development Index
    Gross National Happiness

Utilityからwell-being  happiness

旧経済学新経済学
収穫遁減
19世紀の物理学
均衡、安定、決定論的
Dynamics
人間は同一
外的事情がなく全てが同じ
能力を有していれば死に至る
要素は量と価格
全てが均衡状態にある
真のダイナミクスはない
対象を構造的に単純なものとみる
収穫逓増
生物学に基本を置く
構造、パターン、自己組織化、生命
Cycle
個人に焦点をおき人間は分離し異なる
外的事情や差異が駆動力になる
死は存在しない、システムは常に開く
要素はパターンと可能性
経済は常に時とともに変化

対象を本質的に複雑なものとみる

 

カテゴリー
Geographic Information Science / 地理情報科学

GISで何ができるのか? / What can we do with GIS?

Written in Japanese

前回、GIS(地理情報システム)とは何かについて簡単に書きました。

https://fuchsbaum.site/what-is-a-geographic-information-system/

 

では、そのGISを使って何ができるのかについて例を挙げて話します。

まず、GISはモノやコトに関する地理的位置および範囲に関する情報と属性に関する情報が互いに参照することのできるシステムであるということでした。つまり、気象、環境、経済、社会等あらゆる事象について、住所、距離、面積、体積、方向等の情報と気温、植生、水質、地価、人口等の情報が空間的にどのような関係があるのか、異なる空間とどのような関係にあるのか、のような事象の性質や状態を知ることができるシステムということです。

例えば、こんな時にGISを使うと便利です。「(キャンプをしたいけど複数候補地がある場合)ある場所はどういうところか?」、「(引っ越し先の候補として)ある条件を満たす場所はどこか?」、「(日中と夜の気温差について)変化の程度はどのくらいか?」など。

言葉ではよく分からないと思うので、いくつか事例を挙げます。

Case1 地方自治体におけるエリア別の人口密度

地方自治体で行政域でなにかしらの政策を計画または実施する際には、その時々求められる範囲で人口動態を知る必要があるかと思います。GISでは、適切な条件により生成されたデータがあれば、その適用範囲も自由に設定でき、それをカテゴリーや数値幅に合わせて色分けし、マップとして表現できます。そうした目に見える表現により、情報の共有化が簡単にできます。百聞は一見にしかずのようなものです。(厳密に言うとこの絵だけでは変化を表せてませんけどご了承ください)

例えば、人口分布について滋賀県全体で見るとこんな感じです。左が、10年前の各町丁の範囲で15歳未満の人口割合を示しています。右は、同様に10年前の各町丁における65歳以上世帯員のいる世帯の割合を示しています。これを見ると、大雑把に言って、鉄道路線沿いの町丁には若年層が多く、その反対として鉄道路線沿いから遠い町丁には高齢層が多いように見えます。このデータから実際に比例関係を計算してみると、高い確率で住民年齢と鉄道路線までの距離との間で比例関係がある可能性が示唆できます。こんな感じで、マップで表現してみてから直感的に情報間の関係性に気付くこともよくあることです。

Case 2 山腹斜面の地形評価(傾斜の程度)

GISでは、地理空間の表現方法として地形解析ができることもメリットのひとつです。例えば、山のどこがどれだけ急な斜面になっているのか、などの地形的な情報は衛星画像、航空写真、ドローン等による空撮ではなかなか精確には分からないものです。林業のような山林で仕事をする産業では、現場の状況を詳しく知ることは経営上必要なことです。特に急傾斜の場所では作業方法もそれに適した工程が必要であり、安全面から見ても重要です。GISを利用することで、作業をする現場の状況を網羅的に把握できます。

Case 3 山林での集水域の算出

もうひとつ、せっかくなんで林業に絡めて、山林での作業は水の流れを知ることも大切なことです。GISの地形解析では、傾斜の算出ができることに加え、その方向も分かります。傾斜方向を知ることにより、水の流れが(ある程度)把握できます。水の流れが分かるということは、その場所の上流域と下流域が分かり、水が流れる範囲と量が分かります。それを計算したものが集水域の算出図です。

 

GISで何ができるのか、たくさんできることがあるので、到底一度に書ききれませんが、大体イメージできたのではないでしょうか。

カテゴリー
Agriculture, Forestry & Fisheries / 農林水産 Culture / 文化 Lifestyle / 暮らし

ドイツで製品を売るためには美意識の違いを見極めろ / Assess the difference in aesthetic sense to sell products in Germany

下の図は、マーケティングの基礎としてよく見る構造図です。(汚くてごめんなさい)

マーケティングの基礎構造

一般的に、マーケティングは4つのPで説明されています。すなわち、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(広告)です。それぞれ、どのようなものを作るのか、どの程度の価格で売るのか、どういったルートで販売するのか、どのように消費者に情報提供をするのか、という考え方です。しかしながら、単純にこの4つのPに仕事を分類するだけでは商品は売れず、これは対象とする市場が、消費者の基本的なニーズが十分に充足されていない、また、市場が絶え間なく成長している段階というような前提があります。感覚的に考えても、たとえ、日本で売れる製品をつくったとしてもドイツで売れるとは限りません。当たり前ですが、それは対象とする市場が異なるからです。経済学的に考えると需要(ほしい)と供給が価格と市場を形づくり、市場の範囲は固定されるわけではなく、例えば、需要者の年齢や性別、タイミングによって変動します。その範囲となり得るひとつの例は国単位の市場が考えられます。なぜ、国単位の市場がその範囲のひとつとして成立するのか、私はその国で育ち生活している人の「国民性」が異なるからだと考えています。

 

国民性を表現する気質のひとつに「美意識」があると思います。美意識は、人が美しいと感じる感覚であり、人が発する所作や態度にも当てはまります。日本人は謙虚さが美徳とされているなんてよく聞きますが、これも美意識に近い気質だと思います。その美意識の感覚は、人による造形物や自然への働きかけのような作用により表現され、それは国全体の特徴として傾向が表れる、はずです。

 

例えば、多くの日本人が美しいと思う表現に「侘び、寂び」があります。侘び寂びは、おそらく日本人にしか分からない美的感覚の言葉だと思います。「侘び」をドイツ語にするとdie geschmackvolle Einfachheitやdie Ruhe ausstrahlende Schlichtheitらしいですが、おそらくドイツ人からするとそんな説明をされても美意識のひとつの感覚としてはピンとこないと思います。「寂び」も同様にPatinaと聞いてドイツ人が最初に想像するのは、フライパンの錆や油のコーティングだと思います。日本では、飾りを棄てた閑寂な風情や古びて閑寂な趣があることに美しさを感じる人が多いように思いますし、ドイツでは、その感覚に近いものとして、例えば森林の非対称性に美しさを感じる人が多いように思います。

 

ドイツで製品を売るためには、ドイツ人が美しいと思う感覚、美意識をしっかり理解して、マーケティング戦略を練る必要があります。

カテゴリー
Agriculture, Forestry & Fisheries / 農林水産 Lifestyle / 暮らし Social activities / 市民活動 Working style / 働き方

新たなアクターが地域の森林にビジネスとして関わるための4つのアプローチ / Four approaches for new actors to engage in local forest business

Written in Japanese

これまでお付き合いのあまりなかった他産業・他分野の方や社会起業家と呼ばれる方などにお会いすると、予想以上に農林水産の分野に関心をもっておられることが分かります。そんな方々からは、もっておられる技術・ノウハウや経験を活かし、しっかりしたビジネスとして農林水産業の発展や課題解決に貢献できないものか、というお話をよく伺います。

これは、例えば、林業分野についてのお話です。

「木材資源からクリーンで持続的な地域内エネルギー供給の仕組みをつくることで進んでいない森林整備を促し、森林環境をより良くしたい」というお話や、「子供から大人まで自然に触れる教育現場として森林を活用し、木材という天然資源の良さを次世代に伝えたい」というようなお話もよくあることです。そのために、木材を効率良く熱エネルギーに変換できる装置を開発しているメーカーが山村地域に参入したり、都会から地方に移住した地域住民が主体となって森に幼稚園を設立したり、地域の暮らしの状況に合わせて様々な取り組みが展開されているところも実際にあります。もちろん、無線通信でリアルタイムな状況を把握できるようなIoT技術導入推進などは、人口減少時代で効率的な事業を進める上で大変有効な手段なので、行政で政策として掲げていることもあり、これは林業分野に限らないことです。

基本的に、私は、森林という環境の整備や利用などに対して、今よりももっと多様な主体が様々なカタチで関わることがあっても良いと思っています。

言い換えると、森林という環境(現場)を舞台にした登場人物は、これまでの林業事業体と呼ばれる組織や林家だけではなく、森林を散歩する一般市民から森林で会議をする公人まで、森林が所在する地元住民から生まれて初めてその地域に足をいれる都会の住民まで、様々な立場の人がいたほうがきっと面白いと思います。また、森林は資源としての利用だけではなく、いま地球規模で環境保全の取り組みが進められているように、森林に対しても社会的価値が求められている現代では、様々な人が関わることの必要性を感じています。そのためのツール(手法)のひとつがIoT技術のような先進的技術の導入であり、上手く活用することでこれまで繋がることができなかった人との関係性や新たな方法論を生み出し、課題の解決に結び付くモノもあるかと思います。

しかし、そうした新たなアクターがこれまで繋がりの無かった地域の自然環境を舞台に、ビジネスとして継続的に関わることはそう簡単なことではありません。たとえ、森林という場を借りてイベント開催のような一時的な企画は可能だったとしても、その環境を根本的に変化させたり事業を行う資本として森林を扱うことは、地元の方でも難しいことと思います。それは、財産権のような個人資産の権利や森林法など法令に基づいた理解と活動が必要であること、既存のアクターとの利害関係が発生する等の理由から、ほとんどの場合、新たなアクターだけで遂行できる活動ではないからです。

では、どうすれば、技術も持っていてやる気もある新しいアクターは地域の森林とその管理に関わる主体と良い関係を築いていけるのか、今回はそのことについて考えたいと思います。ちなみに、ここでいう「新しいアクター」とは、メインの仕事を既にもっていて、その仕事の業務上もしくは副業的活動において地域の森林とその管理に関わる主体と関係をもつという人物を想定しています。住む場所は限定していません。

 

まず、考える前提として、他産業にはない林業分野の、また、農林水産業のなかでも森林という環境がもつ特殊性をしっかり理解する必要があると思います。林業分野へのビジネスとしての新規参入は、ひとえにこの特殊性が前提にあるため、他分野に比べ継続的な関わりが難しくなっているのだと思います。

前提1、林業生産は多様で長期にわたる事業であること

基本的に、林業は生産サイクルが長期であるため、生産活動によって得られる利益がすぐには回収できないことに加えて、他産業より生産工程が多段階で、その方法やリスクヘッジの方法などが多様です。また、森林から生産・採取される、人間にとって有用な産物を総称して「林産物」と呼んでいますが、建築用材、紙パルプ用材、合板用材のような木材だけではなく、キノコや樹実類、樹脂類、山菜類など特用林産物と呼ばれるものも含まれます。林業としては主に、木材用途の一般林産物で林業生産所得を生み出しますが、特用林産物から生産活動をして生計を営む場合もあり、林業生産は多様な事業であるといえます。

前提2、林業で扱う資源は半有限的な長期再生可能資源であること

森林を構成する主要素である樹木は年々成長を続けますが、その蓄積が木材として利用する段階になるまで長い年月がかかります。持続的な木材生産と森林環境を保つためには、森林がもつ環境に対する働きを損なうことなく森林が成長する分の一部を活用していくことで循環可能な利用を促し、林業の理想とされる保続という概念のもと森林経営が実行されます。つまり、林業で扱う資源は、蓄積されるまで長い時間がかかることから一定期間に得られる資源は有限とも言え、ある範囲における資源の全体量が決まってるビジネスゆえに資源分配の仕方により利害関係者間の合意形成が困難になる場合もあります。

前提3、林業は十分な経験が必要な専門職であること

林業の生産過程は、苗木生産から植林、下刈り、間伐、伐採、検量、運搬までその作業内容は、素人が簡単に新規参入できるほど単純なものではありません。地域の自然環境的な特徴や歴史的背景、経営的判断や利害関係者との調整などを踏まえて総合的に判断され、ひとつひとつ実施されています。もちろん、それはどの産業でも同様ですが、林業の場合、それに加え、現場では巨木の伐倒など命に直接的に関わる作業も多いので、十分な知識と経験をもった作業者でなければ重大な事故になるリスクが大きいのです。さらに、組織であればチームとして複数名で作業に取り組む場合が多いので、ひとりの責任だけでは済まされません。それゆえに、特に森林整備に関わる場合、新規参入者がチャレンジ的な試みで取り組む事業としてはリスクがあまりにも大きく、支援をする側もそれ相応の覚悟と準備が必要になると思います。よって、現場で林業に従事する者は、常に専門職としての高い意識と技術が要求されています。ヨーロッパで、森林管理官(フォレスター)のような専門職の社会的地位や収入が高いのはそのためです。

前提4、林業は社会資本と公共財を扱うこと

林業は森林という環境そのものを扱います。林業をする現場は、ほとんどの場合、直接的に或いは間接的に、その地域の生活基盤であり、景観であり、社会を構成するインフラに近いものです。自然環境の一部でもあり公共財的な性質をもっているため、単純に林業の経済的メリットだけを追求すると、そうした性質に付随するあらゆる価値を損なう恐れがあります。環境経済学などの学問分野では、これを環境財とか生態系サービスとか言ったりします。森林、湿地、山地等をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全や持続可能な利用を確保することは、持続可能な開発目標(SDGs)におけるグローバル指標のターゲットのひとつにも挙げられていますね。

 

そうした林業という産業がもつ特徴を踏まえた上で、ではどうすれば新しいアクターは地域の森林とその管理に関わる主体と良い関係を築いていけるのか、私は大きく4つのアプローチがあると思います。

 

1.既存の主体及びスキームへの参画型アプローチ

1つ目は、既にその地域にある林業・木材産業分野の主体やビジネススキームの中に入り、組織がもつ目的や産業全体の発展等を目指し、自らが取り組むアプローチです。関わろうとする地域に、たとえ規模は小さくとも林業・木材産業というものがあるのであれば、必ず林業事業体に当たる組織や人物がいて、森林資源が製品/商品となり販売されるまでのビジネススキームが存在しているはずです。ひとつの地域において、同じ資源を用いてもビジネスのスキームや木材の流れは決してひとつだけではなく、主体となる組織は複数ある場合が通常ですので、その中から自身の関心ポイントに合わせて参画していく方法です。

2.新たな主体及びスキーム形成の新規参入型アプローチ

2つ目は、既にその地域にある林業・木材産業分野の主体やビジネススキームに新たな主体として加わり、自身が所属する組織の目的や産業全体の発展等を目指し、取り組むアプローチです。

3.ソリューション提供による後方支援型アプローチ

3つ目は、

4.事業推進の環境を整える間接的支援型アプローチ

Stakeholder Pyramid

 

このように大きく4つに分けていますが、どのアプローチも関わろうと考えているその地域の状況を把握する必要があることは、当然のことです。例えば、その地域で森林・林業・木材産業分野で主体として活動している組織や人物は誰なのか、それら主体と自治体との関係はどうなのか、これまでどのような政策や取り組みがされてきたのか、森林資源の状態はどうなのか、などです。

長年、林業経済分野で調査研究に従事された元筑波大学の志賀和人さんは著書でこのように述べておられます。

森林・林業政策の策定過程とともに林業経営組織の意思決定において、戦略的・管理的・業務的決定を誰がどのように担い、そこにどのような問題があるのか、それを解明、改善しない限り、真の解決策にはならない。現代社会は、市場経済(私的セクター)、制度・政策(公的セクター)、地域社会(共的セクター)が相互に重層的に重なり合い、時間の経過とともに国や地域特有の関係を形成し、しかもそれが常に変化の過程の中にある。この空間軸と時間軸における関係性や歴史性と切り離された諸外国の事例や、全体構造の一部を切り取り、それを理想型としてもその定着は困難である。地域森林管理の主体形成と長期持続性の源泉を考えるうえで、利害関係者と経営組織間のバランスのとれた意思決定の仕組みをどう構築するか、それが重要となる。[…]
[…] 林業経営や森林管理は、地域的多様性や長期的持続性が重要な分野であるが故に各時点の状況変化を意思決定に利用、反映するオープン・ループ・コントロールによる対応が不可欠である。環境変化に対して、なるべく現場に近いところでその情報が共有化され、それを管理方針に反映する仕組みとそれを可能にする経営組織の構築が重要である。

地域森林管理の主体形成と林業労働問題(2011)404~407頁

 

地域の森林(管理)に関わる主体を理解するためには、その地域の林業・木材産業を形成している各セクターの空間的な位置付けを認識する必要があり、概念図にするとこんな感じかなと勝手に解釈しています。(汚くてごめんなさい)

3つの軸は、時間経過、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の程度、インフラストラクチャー(社会資本)の程度です。

ここでいうソーシャルキャピタル(Social Capital)は、人々の信頼関係や互酬性の規範、社会的ネットワークなどの社会組織の重要性を意味します。また、インフラストラクチャー(Infrastructure)は、社会的経済基盤と社会的生産基盤とを形成するものを意味します。3つの軸はある地域のある年(時間)における社会構造の空間を表現し、円は林業・木材産業分野の市場経済(私的セクター)、制度・政策(公的セクター)、地域社会(共的セクター)を指し、時間によってその重なりや相互関係は変化します。それは地域の状況により各セクターの大きさ及び円の大きさとその社会的ポジションが異なります。

 

カテゴリー
Geographic Information Science / 地理情報科学 Social activities / 市民活動

地理情報システムとは何か? / What is a Geographic Information System?

Written in Japanese

GISとは

GIS(Geographical Information System)とは、地理情報システムのことで、コンピュータに取り込んだ地図データや属性データを効率的に蓄積・検索・変換して、地図出力や空間解析、さらには意志決定の支援ができるように設計されたツールである。

GISにはもうひとつ意味がある。地理情報科学(Geographic Information Science)という学問のことである。地理情報科学は、1990年代に生まれた学問で、純粋理論から応用まで、その対象は自然現象から社会現象までと幅広いレベルと分野で貢献している。

GISの適用分野は、地図の作製、自然資源の定性的・定量的な把握と管理、事業計画や環境計画、供給処理施設の管理などの計画・管理業務、マーケティングなど多岐にわたるが、いずれも広範囲な空間を制御したり、管理したりする手段として利用されていることが多い。GISは、自然地理学、人文地理学、地質・鉱物学、都市工学、農学、林学、環境科学、生態学、地域経済学、考古学など多くの分野で注目を集めている。

GISのイメージ(滋賀県の各情報をレイヤーとして表現した場合)

 

GISの特徴と表現の基礎

事象を理解しようとするとき、まずその事象に関係ある物体を把握する必要がある。GISで物体(空間)を把握する場合の特徴として3つある。

1つ目は、的確な範囲で物体(空間)をとらえることができること。

すなわち、顕微鏡が小さくて見えない世界を見やすく展開するのに対して、GISは大きすぎて全体の把握が困難な対象をわかりやすく展開する手段であると考えられる。また、逆に全体(システム)の中で、大きくとらえた後、着目した要素の詳細な特性を瞬時に表示できる。紙ベースの手法では、このように任意の単位で空間データをとらえることは大変な作業であったが、GISでは簡単に行うことができる。

2つ目は、多くの情報が重なりあう実世界を、全体を意識しつつ必要な情報だけを抽出することができること。

言い換えると、多くの地理的な情報(データ)の重なりあう実空間を、必要な情報(データ)ごとに(情報群または情報図)レイヤーを作成し、必要に応じて重ね合わせ空間をとらえることできる。つまり、普段から見てるなんとかマップや航空写真などで同時に見ている、山や川などの自然分類、土地利用、植生、水路、標高等の情報を各レイヤーに分解し、目的に応じてそれらのレイヤーを重ね合わせる。実空間をレイヤー構造化して理解することができる。

3つ目に、GISの扱うデータ形式としてラスターデータ形式とベクターデータ形式の2種類のデータ表現を用いること。

ラスターデータ形式は、空間をメッシュにより表示する形式である。標高データのように、値が絶対尺度になっている数値データと土地利用データのように名義尺度となっているデータ(カテゴリーデータ)に大別できる。ラスターデータでは、一般にメッシュの大きさが空間対象物に比べて十分小さいことが求められる。その反面、メッシュのサイズを小さくするとデータ量が増大し、記憶容量の増大・処理時間の増大などの欠点がある。

ベクター型のデータは、図形情報と各図形要素の属性を保持する属性テーブルとで構成されている。ベクター型の図形情報は、点、線、面の三つのパターンで表現される。例えば水田は面(ポリゴン)、水路は線(ライン)、水利施設は点(ポイント)として形状を表す。属性テーブルは、各図形要素の情報を表形式で保管している。例えば、水田の圃場面積、減水深、収穫量等の属性情報を区画の図形情報とリンクさせ、情報を管理している。

GISで扱うデータ形式(左:ラスターデータ、右:ベクターデータ)

GISの特徴として、ラスターデータとベクターデータの形式表現があることを言いましたが、それぞれのデータで属性情報を付加することができます。通常、ラスターデータは、空間全体を均一なグリッドに分割していますが、そのグリッドにその地点の属性情報を与えることで地理空間を表現します。ベクターデータは、空間的な位置や形状を点(ポイント)、線分(ライン)、領域(ポリゴン)の組み合わせによって表し、それらに属性情報を与えることで地理空間を表現します。

地理空間と属性情報の関係(ベクターデータ)

 

GIS利用の手順

GIS利用の手順は、大きく「データ収集」、「データ形式変換」、「投影法設定」、「表示/解析」に整理することができる。一般的に、GIS利用の作業の中で前処理に対する労力の比重が大きいが、年々進むデータの基準化と整備のおかげで、以前より軽減されている。また、前処理が行われて、GISデータが作成された後の解析も、既存のプログラムと組み合わせることにより、精度が向上し、事業の調査、評価、計画さらに施設の管理にも効率的に利用できる。

 

補足(パトリックゲデスと地理情報科学からの視点)

誰もがいつも見ている目線やルーティンワークの視点を少し変えただけで物事の理解が深まったり、意図せず課題の解決につながったりした経験があるかと思います。GISの有効性は、こうした様々な視点から物事を考えることができる、空間情報の視覚化やそこから明確に情報共有が可能となる点が挙げられます。

19世紀後半にスコットランド出身のパトリック・ゲデスという近代都市計画の学者がいました。社会学や建築学分野ではよくご存知の方がいらっしゃるかと思います。20世紀初頭、都市計画に地域という概念を取り入れ、地域調査(Regional Survey)運動を展開した人物です。彼は、社会学、地理学、政治学など様々な学問が重なり合うCivicsという言葉で、統計や数値を重視した社会学ではなく、社会的改良を志向し、都市に関する地理、歴史、政治、教育といった様々な要素を組み込んだ応用社会学としての市政学の重要性を主張しました。

パトリック・ゲデスの「知識(情報)の総合的統合」
Source: Institute for Palestine Studies

パトリック・ゲデスは、GISの基礎となるような考え方(Regional Survey、Outlook Tower、know your region and you can understand the worldなど)を提唱し、どれも現代においてもあらゆる課題に適用できる考え方だと思います。フィールドワークの重要性にも通じるところがありますね。

Diagram of Patrick Geddes’s interdisciplinary Outlook Tower(学際的なアウトルック(展望)タワー)

現在、世界的な地球環境保全の取り組みである国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)、京都議定書締約国会合(CMP)、パリ協定締約国会合(CMA)などが開催されています。それらに繋がる最初の国連会議が1992年にリオデジャネイロで開催されました。それ以来、「持続可能性/サステナビリティ」の課題に対する統合的対応の創出における市民参加への「ローカルアジェンダ21」アプローチが国際的に広がっています。持続可能な開発を意図する一般的な呼びかけである「Think Global、Act Local」は、このパトリック・ゲデスの著書「Cities in Evolution」に起因していることは忘れてはいけないことです。

 

カテゴリー
Agriculture, Forestry & Fisheries / 農林水産

成長する林業事業体-株式会社柴田産業(岩手県一戸町) / Developing Forestry Organization – SHIBATA industry Co., Ltd (Iwate)

Written in Japanese

欧州の生産技術やIoT(Internet of Things)技術の導入など積極的に進められている林業事業体さんの現場を見学するため、岩手県の一戸(いちのへ)町を訪問しました。今回、訪問したのは「岩手の山を元気にする木材屋」を基本理念に先進的な林業・木材産業に取り組んでおられる株式会社柴田産業さんです。

2020年1月下旬のことです。

柴田産業さんは森林整備をはじめ素材生産から、製材、チップ製造、木材加工まで木材産業に係る一通りの事業を展開されています。

ご案内いただいたのは専務取締役の柴田君也さん、日本木材青壮年団体連合会の副会長もされています。また、その弟さんである取締役の柴田智樹さんです。代表取締役はお父様で1970年代前半より同族経営で会社を大きくしてこられました。

素材生産面では、フォレストワーカー制度を活用して人材育成を進め、欧州で利用されている林業機械を導入し、安全性と生産効率を飛躍的に向上させています。生産された良材は、自社トラックで運搬、自社で製材(3ライン)することで多様なニーズに対応でき、畜産建築等の大型物件用材を中心に木材加工を経て販売されます。製材の際に発生したおが粉は畜産業者に卸し、畜舎の敷材として利用されたり土木現場で活用されます。低質材については、合板用とチップ製造(針葉樹、広葉樹合わせて年間24,000トンほど)してバイオマス発電と製紙用として出荷している。

素材生産で活躍している主な林業機械は、オーストリアのKonrad Forsttechnik社製のハイランダー(Highlander)、スウェーデンのグレモ社製のフォワーダ1050Fです。 しっかり稼働しているかどうかは別として、ハイランダーは日本には未だ4台しかありません。チップ製造では、破砕機としてドイツのDoppstadt社製のガラパゴス(galapagos)を利用しています。従来のハーベスタでは急斜面など走行が難しい地形もハイランダーでは無理なく柔軟に作業ができ、生産能力も飛躍的に上がります。高性能ハーベスタを導入して5年程度になりますが、ひとつの作業班で生産量1日100㎥を越える日もよくあるとか。取締役の智樹さんは、実働部隊を現場監督しつつかつハイランダーのオペレーターとして実際に現場で仕事されています。欧州の林業機械導入だけではなく、その技術を学び岩手式に磨くために、毎年のようにヨーロッパなど国外の林業現場や現地のオペレーターを視察する機会を積極的にもたれる姿勢は成長の原動力ともいえます。
柴田産業さんの取り組みは林政ニュース第609号にも紹介されています。

1月に訪問した際には、新しく導入されたドローンを使った現場把握と作業班での情報共有の効率化を進められているところでした。最も効果的なのが、上空からこれから作業をする現場&作業をした現場を森林作業に携わる全員が共有できること、それにより作業効率だけではなく安全性の向上が図れることです。これを機に、客観的で精確な情報の入手とともにこれまでの森林整備に関する各種記録などGISを用いた情報整備を進めていくそうです。上空からの観測に加え、地形情報などの数値情報を上手く利用することで、自然環境と作業パターンに適した計画と事後評価→改善が可能となり、業績アップは間違いないでしょう。

IoT技術導入実践例(作業後の現場) ©株式会社柴田産業

株式会社柴田産業さんの今後の躍進にもぜひ注目したいです。